高松に戻ってきた渡り鳥が新興ヤクザから組を守って去っていく。『渡り鳥』シリーズのテイストを踏襲しつつも、主人公の名前やヒロインが異なる番外編的作品。
瀬戸内海をゆく遊覧船の甲板で羽衣港を見つめる男、滝浩。彼はこの羽衣市の筧組の幹部だったが、突然この港町から姿を消した…。それから3年。筧の娘・美里は浩への思慕を胸にこの町の青年実業家・松山と結婚した。だがこの結婚は新興ヤクザの宇多組を刺激した。落ち目の筧組に松山の財力が加わるとの理由だった。その結婚式の夜、筧の親分・修太郎を乗せた車が事故を起こし即死してしまう。筧の葬式では組の若い者は殺気立ち、とりわけチンピラの次郎は宇多組の仕業と怒った。そんな時、一通の弔電が舞い込み、浩が帰ってきた。羽衣港に着いた浩はまっすぐ筧の墓所へ向かった。そこには一人墓標にぬかづく美里の姿があった。それを宇多組の殺し屋・陣内がじっと見ていた。ガソリンスタンドを経営する源造の店で浩は次郎から筧組の跡目を継いでくれと頼まれるが、浩はヤクザは嫌だと断るのだった。一方、筧組の石田も結婚式と葬式で金を使い果たし松山家を訪ねるが、社長の松山もヤクザを認めなかった。その頃、浩は筧の死んだ事故現場を見て、事故ではない可能性に気付く。