青江舜次が外国航路から帰って来た夜の波止場は深い霧に包まれていた。その岸壁で舜次が佇んでいると、娘が近づいてライターを差し出した。それは船で知り合ったみきという娘だった。淡い街灯の光の中で、二人はどちらからともなく手を握り、いつかまた霧の深い夜に会おうと誓い合った。だが、舜次が帰宅すると彼を待っていたのは、父の剛平が殺人罪で投獄されたという黒い噂だった。剛平は波止場の沖仲仕の組合長である。といっても、実態はやくざの元締めで、舜次はそんな家庭が嫌になって船員になったのだった……。刑務所に行くと、剛平は無実の罪だと舜次に訴えた。殺された男は剛平の子分の国松という男で、血の海の現場にドスを握った剛平が意識不明で倒れていたのだった。つまり何者かが剛平を殴り、失神させた後で現場に運び込んだのだと剛平は説明した。舜次は証拠集めに奔走したが、弁護士もサジを投げるほど不利な証拠ばかりだった。沖仲仕たちもみんな強欲な剛平を憎んでいたので、誰も舜次に助言しなかった。ところがある日、昔剛平に世話になったという情報屋のサブが意外なことを舜次に教えるのだった…。