新緑が五月晴れに映えて、美しい風景を作り出している伊豆の改装道路。精悍な体躯に野性的相貌の男と、ワイシャツにジャンパーというチャキリス・スタイルの男の二人連れがトラックから降り立った。二人は戸倉剛、武の兄弟で仕事を探しにヒッチハイクで上京する途中だったが、故障した車の修理をしてやったことから、早川物産の社長・早川卓造と、ジャズ界の新進女マネージャー・牧村美和子と知り合いになった。剛と武は、とりあえず東京で万福亭というそば屋を開いている伯母・福本ときのところへ転がり込むことにした。ときは相好を崩して二人を歓迎してくれたが、ときの一人息子和夫は、はじめのうち、同世代の剛に対して反目していた。しかし、歌手志望で唄がうまい武を慕うようになった。和夫も歌手志望だったのである。そんな二人を見ながら剛は毎日職を探して歩いていた。今日も職がなく重い足取りで帰ってきた剛は、万福亭で酔っぱらってくだをまいていた三沢幸吉という男をつまみ出し、それが縁で彼の経営する三沢運送店で働くことになった。