海上の惨殺死体にひそむ恐るべき完全犯罪を追求、緊迫する神経戦のなかにもユーモアを忘れぬ、おなじみ事件記者シリーズ第10話。
久しぶりに休日のとれた東京日報の菅、中央日々の岩見、新日本タイムスの岡本の3人は印旛沼に鴨猟の舟を浮かべていた。事件に追い回され、取材に骨身を削るような神経戦を繰り広げる3人も、この日ばかりは呉越同舟という訳だ。ところが射ち落とした鴨を拾おうとした3人は水死体を発見し、警視庁記者クラブに飛ぶようにして帰った。この数日間、事件らしい事件もなく退屈を持て余していたクラブは俄然色めき立った。死体の顔はめちゃめちゃに潰され、手掛かりになるものはほとんど残されていなかった。東京日報の浅野は以前記事にしたことのある青果会社の金を持ち逃げした男と身体的特徴が似ていることから、もしやとあたりをつけ、さっそく神田に繰り出すとすでに各社も日報の動きを嗅ぎ付け駆け付けていた。