キューポラのある街
きゅーぽらのあるまち

貧しさにもめげず強く、明るく、逞しく生きる子供たちをテーマに描いた感動の珠玉篇。浦山桐郎監督第一回作品、文部省選定。主演の吉永小百合が当時最年少のブルー・リボン主演女優賞を受賞し、以後大スターへの道を躍進することにもなった記念すべき作品。

鋳鉄溶解炉キューポラやこしきが林立する埼玉県川口市は、昔から鋳物職人の町である。石黒辰五郎も、職人気質一途にこしきを守って来た炭たきだ。辰五郎がつとめる工場の職工は、今年二十歳の塚本克己を除いて中老ばかり。それだけに大工場に買収されると辰五郎ほか三人の職工はクビになり、翌日から路頭に迷った。辰五郎の家は、妻トミ、長女ジュン、長男タカユキ、次男テツハルの五人家族。辰五郎がクビになった夜にトミは男児を産んだが、ヤケ酒を飲み歩いていた辰五郎は病院へ顔を出さず、克己とジュンが介抱した。ジュンは根性ある少女で、運動神経や成績もよく、高校進学を志していた。しかし辰五郎の退職の涙金も出ない石黒家は、次第に苦しくなっていった。ちょっとした揉めごとで家を飛び出していたタカユキを、姉のジュンが迎えにくると、彼は喜んで家に帰った。タカユキは心から姉を慕っていた。タカユキがチンピラたちにインネンをつけられた時は、ジュンは敢然とチンピラたちの本拠へのりこみ、タカユキを救い出した。貧しくとも、この姉弟の心には輝かしい未来の灯があかあかと燃えていた。なかなか職がみつからない辰五郎が、ある日酔いつぶれて帰って来た。ポケットからは、予想新聞と数枚の千円札。わずかな退職金はオートレースにつぎこまれてしまったのだ。そこへジュンの親友ノブコがやってきて、小さいながらも彼女の父が経営する会社で辰五郎の職がみつかったと知らせてくれた。父の就職が決まりジュンが息をついたのも束の間、新しい職場には新しい技術が溢れており、勘を否定する若い工員に我慢出来なかった辰五郎は、まだ半月しかたたないというのに「会社なんかいけるか!」と酒を飲み始めてしまう…。

日本
製作:日活 配給:日活
1962
1962/4/8
モノクロ/100分/シネマスコープ・サイズ/8巻/2713m
日活
【東京都】港区(新橋)/小平市(日立製作所武蔵工場)
【埼玉県】川口市(荒川堤、南中学校庭、鋳物工場、川口銀座、川口駅前、川口オートレース場)/さいたま市(別所沼公園)/大宮市(大宮駅)
ジュンが見学に行く工場(ロケ地は日立製作所武蔵工場)で説明を受ける機械は、「ゲルマニウムペレット厚さ自動選別機」。