魅力の低音、胸をふるわす哀愁、堂々日本レコード大賞に輝いたフランク・永井“君恋し”の映画化
銀座裏のバー「シャトウ」はその洗練された雰囲気が売りもので、連夜客でいっぱいだった。常連客たちの眼をひいたのは、バーの空気にはなじみきれぬ、どことなく淋しげな感じの女性だった。グラスの持ち運び、客の応対、その指先の動きまでが清楚な匂いを漂わせているのだった。彼女の名は津村明美、このバーのマダム澄子の姪である。上京するまでは田舎の病院の看護婦をしていた。高原にあるその病院で明美は宮坂裕之と知り合った。グライダーで怪我をして入院した裕之と明美は将来を誓い合って、裕之は東京へ帰り、明美は病院に残った。裕之は上役の汚職事件の責任を負って自殺した男の息子である。その上役、森近はその代わり裕之母子の面倒をみていた。そして今は裕之が森近の経営する会社に勤めている……裕之のあとを追って東京へ出て来た明美は、仕事がみつかるまで叔母のバーの手伝いをしているのだ。ある日、明美は裕之に聞いていた住所に裕之を訪ねたが、裕之には許婚がいるという裕之の母の言葉を聞いてうちひしがれるのだった…。