「俺の腕をそんなハシタ金で買えると思うのか」龍崎と名乗るその不敵な男は、ニヤリとボスの井関を一瞥すると、そう捨てゼリフを残して出ていった。馬鹿にしやがる、といきりたつ乾分たちを制した井関は、あ奴がもし大須賀組の用心棒になったらまずいと後悔した。この小都市に、最近めきめき勢力を拡げてきた井関が、目の上のコブと思っているのが、古くからこの土地に根を張る大須賀組だったのだ。だが、龍崎四郎は井関のところへくる前に、すでに大須賀に腕を売り込みに行き、あっさり断わられていた。その日、龍崎は街の玉突屋「たむら」で暴れていた井関組のチンピラを掴まえて、井関から損害賠償の五万円を取り立て、「たむら」の息子で熱血漢の正一に返してやった。「たむら」は繁華街にあり、井関はそこを乗っ取ろうと、以前からしきりにいやがらせを続けていたのだ。それを正一から聞いた龍崎は、正一に協力を約束した。その夜遅く、突然龍崎は襲撃されたが、それは大須賀が龍崎の腕を試すために仕組んだテストだった。大須賀は龍崎のガンさばきを見て、すぐ彼を用心棒に雇った。翌日、大須賀の身代りで刑務所に入っていたチンピラの新吉が帰ってきた…。