由良二郎はしがない四回戦ボーイながら将来は世界チャンピオンになるのだと、そば屋の出前持ちのかたわら鞍馬拳闘倶楽部に所属してボクシングにいそしんでいた。鞍馬拳の会長、鞍馬正人は戦災孤児だった二郎を実娘の涼子と同じようにわが子のように可愛がっていた。デビュー戦で見事にKO勝ちを収めて初陣を飾った帰途、二郎は一人の美しい女性・川路美緒に呼び止められた。美緒は元フェザー級チャンピオンで現在はボクシング界でも凄腕といわれているプロモーターの川路修吉の妹で、二郎の素質に目をつけ勧誘に来たものだった。二郎はいったんはその誘いを断ったが、あきらめきれない美緒は連日鞍馬拳に押しかけるかたわら、トレーナー候補として元鞍馬拳のボクサーだった城木喬の消息を探して回った。城木は未来の世界チャンピオンと嘱望されながら、修吉との試合で不可解なKO負けを喫してボクシング界から姿を消した男だ。美緒の熱意は鞍馬と二郎を動かし、飲んだくれに変わり果てた姿で発見された城木も、城木を尊敬していた二郎の真剣な願いに閉ざしていた心を開き始めるのだった。