いのちの朝
いのちのあさ

武者小路実篤原作「暁」の映画化。孤高の老画家と、彼を助けるやさしく美しい娘の愛情と喜びをあたたかく描いたホームドラマ。

武蔵野で美しく成長した明るい性格の吉元冬子が義兄・小田のはからいで保険会社に働きに出たのは、画家の父・小次郎のためだ。小次郎は自己の芸術に忠実な男で、好んで描くのは野菜や樹木など平凡な風物ばかり。友人の村野がダイナミックな描写で今や画壇の重鎮であるのに対し、小次郎の絵は一向に売れず、家計は苦しくなる一方だった。母や姉は父に売れる絵を描いてほしいと毎日グチをこぼしている。冬子は父を芸術家として尊敬していたが、それでも「もっとすばらしい絵を書いて、個展でも開いてくれたら」と心密かに願っていた。冬子たちの願いを知っている村野は、ある日彼を訪れた小次郎に、ちがったものを描いてみないかとすすめた。かつての小次郎の愛弟子で、ふとしたことから仲違いしてしまった沢辺の成長を聞いた小次郎は、大いに意欲を刺激された。そんな父に冬子は「結婚するまでに、是非お父さんに描いていただきたいの」と、お願いした。冬子の頼みに情熱を燃やした小次郎は、百号の大キャンパスに冬子の肖像画を描こうと翌日から必死に取り組んだが、思うように出来ない。家族や友人のあたたかな応援につつまれた小次郎の額には、逆に苦悩のシワが次第に深くきざまれていった。そんなある日、村野が沢辺との和解話を持って来た。絵が国際コンクールに入賞して留学することになった沢辺が、出発前に小次郎と和解して冬子に求婚したいという。小次郎は冷たく断わってしまったが、それを知った冬子は「お父さんは頑固よ!それだけでみんなの好意をふみにじってしまうのよ!」と涙を流しながら強い言葉をあびせ、家を飛び出してしまう…。

日本
製作:日活 配給:日活
1961
1961/7/1
モノクロ/69分/シネマスコープ・サイズ/6巻/1874m
日活
【東京都】千代田区(三井生命ビル)/大田区(羽田空港)
【神奈川県】横浜市(鶴見・総持寺)