ドル紙幣の巧妙な密輸ルートを粉砕するため、お馴染み部長刑事がオトリとなって戦慄の組織に潜入し大活躍する刑事物語シリーズ第10弾。
ようやく陽ざしが春めいてきたとはいえまだ寒いとある日、シャンソンの女王、イヴォンヌ・モワローのリサイタルが東京ホールで開かれていた。満員の席の中におよそ場違いな雰囲気をもつ男が二人座っていた。佐藤源造刑事と息子の保郎部長刑事である。リサイタルの主催者・小松川は保郎の大学法科時代の同窓生で、いまは芸能界の切れ者としてその興行的手腕を奔放にふるっている男である。偶然切符を手に入れた保郎は小松川と卒業以来の再会を喜び合うのだった。それから数日後、保郎は横浜の殺人事件の捜査に当たっていた。この事件は闇ドル買いの仲間割れで、立川基地の殺人に使用された拳銃で警視庁には全然記録のないスペイン製のアストラ・オートマチックが使われていた。立川と横浜の事件は同一人の手によって引き起こされたものではないか?捜査陣は俄然色めき立った。