田舎から上京した少女が、大都会で知った様々な人生体験を通して力強く成長してゆく過程をほのぼのとした愛情で描く、感動の抒情篇。
汽車が煙を吹き上げながら上野駅に滑り込んできた。それにはセーラー服姿のカネ子も乗っていた。貧しい家族を助けるために田舎から上京してきたのだった。しかし彼女は悲観しておらず、雑草のような強い意志と底抜けの明るさをもった少女で、初めての東京にその美しい瞳をキラキラとさせていた。駅にはイトコの由造が迎えに来ていた。彼は小さなオートバイ屋の長男で、楽団を夢見て暇さえあれば下手なトランペットを吹いている音楽青年だった。カネ子もまた変わった夢をもっていて、小説家の弟子になると言って、地図をたよりに郊外にある憧れの小説家、草田の家を訪ねた。カネ子はそこで草田から「世の中はそんなに甘くない」と散々説教を受けたが、草田の一言一言は彼女を余計感激させるばかりだった。カネ子は苦労をしてこそ本当の小説が生まれると知り、張り切って就職先を探すことにする。何も知らない世界に体当たりで飛び込んでいくカネ子だったが…。