速水八郎は西武ヘリポートの操縦士だ。今日も東京を眼下に見ながら、鼻唄交じりの操縦をしていたが、「中央アルプス竜神岳の遭難者を救助せよ」というタワーからの指令を受けると一瞬緊張して操縦桿をグイと廻した。ポートへいったん戻った八郎は、遭難者の叔父と名乗る男を連れて、すぐさま飛び立っていった。タワーの通信室では、通信士の秋山ゆかりが飛び去る八郎のヘリコプターをじっと見送っていた。彼女は八郎といつも口喧嘩ばかりしているが、それだけに彼を強く愛しているのだ。現場に到着した八郎は、巧みに遭難者をヘリコプターに収容すると、同乗の男がぜひ東京の病院へと主張するのを押し切って、近くの甲府へ飛んで行った。だが、男の鋭い眼が遭難者の上に注がれているのを八郎は知らなかった…。