この髭百万ドル
このひげひゃくまんどる
八字髭が自慢の元部隊長と、元気溌剌とした三人のお嬢さんたちが、百万ドルの髭をめぐって捲き起す痛快傑作喜劇

横にピンと張った威風堂々たる八字髭。元陸軍少将獅子丸陣八60才、といってもこの八字髭が万軍を叱咤したのは昔のこと。いまは、三人の娘にお小遣いをもらって暮らし、毎日毎日が娘のパンティの洗濯と便所の掃除に明け暮れるというだらしなさ。もっとも、A級戦犯だった男が堂々と大臣になっているご時世に、B級戦犯だったからといって職にもつかないというのだからそのお人好しの程が知れようというもの。したがって、ピンと張った髭の権威も今や地に堕ち、三人の娘たちも父親の心配をよそに勝手なふるまい。しかし、長女の京子が電報でホテルへ呼び出されるという事件が起きては、親としても黙っているわけにはいかず、陣八は慌ててそのホテル「楽々荘」へ飛び込んだ。ところがその浴室で彼が見たのは京子が裸のまま男に首を絞められているというあわやの場面だった。びっくりした陣八がその男にむしゃぶりついた時、喜ぶと思った京子は何と大変な剣幕。よく聞いてみるとこの男は新進推理作家の隅田川乱鬼で、彼を好きな編集者の京子が協力してストーリーの研究をしているところだという。こうなると心配なのは他の娘のこと。次女の日出子はどうしているかと勤め先の自動車販売会社へ来てみれば、恋人の一ノ瀬を放り出してお色気サービスも過剰気味に車のセールス中、末娘の邦子も恋人のボクサー・大和田のトレーニングに夢中なあまり、叱る父親をアッパーカットで気絶させてしまうといった有様。このまま捨て置いては我が家の一大事、娘三人を前に道を説いてはみたが、経済的主導権を持たぬ父親の小言などは馬の耳に念仏。そこで陣八は一大決心をして職探しをすることにした…。

日本
製作:日活 配給:日活
1960
1960/8/24
モノクロ/5巻/1453m/53分/シネマスコープ・サイズ
日活
【東京都】千代田区(飯田橋公共職業安定所/駿河台・後楽園球場を臨む坂上)/港区(新橋・銀座の柳碑前)