刑事物語シリーズ第5弾。馬券売場襲撃事件をめぐり謎の拳銃を追及する父子刑事の苦闘と刑事魂を描く異色篇。
ある初夏の夕方、場外馬券売場に大胆不敵な強盗殺人事件が発生した。犯人は二人で、現金二十万円を強奪したうえ馬券売場の主任を射殺し、煙のように消え去った。本庁では直ちに特別捜査本部が置かれ、佐藤保郎部長刑事は現場検証へと飛び出した。目撃者の話によると、一人の男はナイロン・ジャンパーを着用していたという。現場には、チューリップマークのラバーソールの靴跡が残されていた。凶器の拳銃は珍しいゲルニカのものだと判明したが、前科リストのライフルマークに合致するものはなかった。そんな折、一人のタクシー運転手が本部に出頭して、昨夜乗せた二人連れの客がどうも事件の犯人らしいといい、兄貴風の男は浅草で、もう一人の弟分らしい男は上野公園で降ろしたという。その運転手の供述をもとに記憶の確かな弟分のモンタージュ写真を作成した保郎は、その夜久しぶりに父の源造刑事と一緒に上野の繁華街をぶらつき、源造の顔見知りの地回り・サブからその男・信吉が山谷のドヤ街にいるらしいことを聞き込んだ…。