銀座というところは、全くピンからキリまでの雑多の人間が、終日右往左往しているところである。倉田刑事の目をかすめながら、チョコチョコとスリを働く靴磨きの良坊やリチャード、地下酒場「レピート」のボーイ守山といったハイティーンもそのうちなら、外国製品をリヤカーに山と積んで店を出すハクライのお春も銀座人種の一種である。そこへ突然、さしもの彼らも目を見張るような不思議な少年千鳥三郎があらわれた。トランプさばきも立派なものだし、ドラムもこなす、競馬をやらせてもいっぱしの通。自称ながれものというが、一寸した正義派で、ハジキも持っている。良坊たちがこの三郎に一目おかざるを得ないのも、スリの現場を三郎に見つかってお説教されたからだけではなく、三郎が何をやらせてもイカスからだった。良坊、リチャード、守山、それに花売娘の久子の四人の家は銀座近くの河っぷちのポンコツバス。この仲間に三郎が加わった日、留守番が久子一人なのを見越して、サン商事の神山の乾分たちがバスを襲い、滅茶苦茶にして引き揚げて行った…。