ふとしたことから人生の岐路を見誤ってしまう人間の心情を、事件を追う敏腕記者を通して描く。新興宗教を題材に取り入れた鈴木清順監督のサスペンスで、長門裕之が清順作品に初出演している。
東洋新聞社会部記者の正太郎は恋人の啓子に頼まれ、ある人物の行方を追っていた。啓子の父、順平だ。順平は善良な人柄で品行方正な人物だったが、香港から帰国後、退職金の三百万を持って謎の失踪を遂げたのだ。普段の生活からそんな様子は全く見られなかったため手掛かりがなく途方に暮れていたが、渋谷のとあるバーから「順平さんから指輪を預かっている」との連絡が入る。早速正太郎はバー「エメラルド」を訪ね情報を得ると、その夜順平と一緒にいたという男を尾行する。しかし正太郎は意外な事件にぶつかる。尾行していたその男は旅館で女と心中を図ったのだ。唖然とする正太郎の元に啓子から電話が入る。「パパから電報があって、明日帰るって―」正太郎は何かおかしいと思いながらも啓子の元へ戻る…。