のんびりとした昼下りの下町…。レインコートの男が粋な構えの門をくぐって数分後、その男の訪れた玄関では女主人が無音拳銃のために血まみれになってあえいでいた。その頃、本庁の部長刑事に昇進したばかりの保郎は、恋人の女医・久美子に会うため警察病院を訪れていたが本庁からの緊急電話で直ちに現場に向かうのだった。被害者は阿漕な貸金業を営む由利江という女である。すでに現場検証のため、本庁から捜査課の面々、所轄の三原署から保郎の父親である源造刑事も来合せていた。由利江は救急車で病院に運ばれていったが、驚いたことに保郎の名刺が犯行に使われていたことが判明した。しかし、保郎は名刺の裏には必ず日付を記入し、その日に名刺を渡した3人の名前も手帖に記していたので、まず、その3人にあたることにした。テレビ局のディレクター、証券会社の社員はいずれも保郎の名刺を持っていたため、3人目の出版業の男・熊部に会ったが、熊部は名刺を手帖に挟んだまま銀座の公衆電話ボックスに置き忘れたという。この線は一旦中断を余儀なくされた。捜査会議の席上、源造は由利江を狙撃した拳銃が最新式の無音拳銃であることから、ハジキの線を重点的に洗うべきだと主張したが、保郎は被害者が金貸しであることから債権者を調べることを主張し、二人の捜査活動は本格的に始まった。