深夜の神宮外苑を抜きつ抜かれつ、猛烈なスピードで突っ走る数台のオートバイ。それは無軌道な雷族による向う見ずのオートレースだ。わずかの賞金と虚栄心のため命をはってこの超スピードのギャンブルに興じる一群のハイティーン――兄貴分の健次、情婦の弘子、徹也、一郎、登紀子、ユリらのほか、最近仲間入りした忠夫。ところが、その最終レースに大事件が起こった。健次の車を借りて出場した忠夫が通りかかった学生を轢いてしまったのだ。「間抜け奴ッ。ヘマしやがって、早くズラカるんだ」健次の怒声に一同はわれ勝ちに逃げ出した。「忠夫、おめえのために当分レースが出来ねえんだ。その埋め合わせに二万円都合してこい。さもないと学生を轢いたことをサツへバラしてやるそ」健次の恐ろしい強迫に気の弱い忠夫はいっぺんに縮み上がった。しかし、二万円という大金は忠夫には工面のしようもなかった。その上、彼の父親壮六は元軍人の一徹者で、家庭はものすごく厳格だった。健次からも毎日のように脅され思い余った忠夫は、ある日姉の澄子の貯金通帳を持ち出そうとして壮六に見つかってしまった。烈火のごとく怒った壮六が逆上の余り日本刀を抜いて忠夫を追い回し、家の中は大騒ぎとなった。だが、その隙に忍び込んだ健次が壮六秘蔵の旧軍用拳銃を盗み出したことは、誰も気がつかなかった。