事件記者シリーズ第三弾。これは新米記者の初手柄が誤報で、それが予告殺人事件、偽装殺人まで捲起こし犯人に挑む事件記者を描いたもの
残暑もきびしい東京の街々。ここは警視庁内の記者クラブ――おなじみ日報の相沢キャップを始め、日日の浦瀬キャップ、タイムスの熊田キャップらが珍しくのんびりと談笑中、突然、強盗という知らせに俄然クラブは色めきたった。早速、車で飛び出す伊那ちゃん、日日のチャッカリ記者岩さん達……しかし、現場に超スピードで駈けつけたものの、何とこれが競輪で金を使いこんだ男の狂言とわかり、さすがの伊那ちゃん達も、ポカンとした表情。来合わせたサツ廻りのタイムス記者竹本もガッカリするのだった。ところが、その帰り道、伊那ちゃんと岩さんは交番で痴漢の思わぬ拾い物をした。男は水口という下谷病院の薬剤師で、映画の観覧中、隣にいた女の手を握ったということだった。「このエロ野郎!」好江と名乗るその女は興奮しながら巡査に訴えていた。一方、おとなしそうな若い薬剤師はしきりに否定中……伊那ちゃん、岩さんたちは取調べの立会いもそこそこに帰社するや、得意満面記事を送るのだった。特に岩さんは没が続いただけに「うんと派手に出してくださいよ」とデスクに依頼するほど。翌日の新聞には、「映画館に痴漢」という日報のベタ記事の他に「エロ薬剤師捕まる」という一段派手な記事が日日の紙面を飾るのだった。だが、その記事は誤報だった…。