大都会東京の夕暮れ、雑踏する新宿の街角に京子は今日も人待ち顔に立っていた。京子と浩はかわいそうな戦争孤児だが、あの空襲の時死んだと思っていた父親が実は生きているという風の便りに、もしやというはかない希望から、毎日こうして大勢の人の行き交う繁華街の街角に立っているのだった。だが、いつの間にかそんな京子に不思議なアルバイトが生まれていた。どこの誰とも知らぬ男女のラブレターの取次、すなわち彼女が勤める喫茶店「コロンボ」の常連の男が差し出す手紙を街角で女に渡すというそれだけの役目なのだ。薄給の京子はこの奇妙な副業のおかげでどうにか中学生の浩と二人食べてゆけるのだった。京子が麻薬密売組織の瀬川によっていつの間にか重要なレポ(連絡員)に仕立てられていることや、その実態を追う事件記者・池田哲夫の存在があることなど、その時にはまだ知る由もなかった…。