女中のおヤエが難解な方程式をノートしている。奉公先である柴崎家の次男・英二郎がテープ・レコーダーに録音し、カメラに収めてきた学校の講義を、おヤエに写させているのだ。柴崎家は、主人の英介が地球物理学の権威、長男の英一は大学を首席で卒業した科学者、長女の絹子はテニス部のキャプテンで各種トーナメントに連続優勝。いずれもその道のナンバー・ワンだったが、英二郎だけは学校はサボル、小遣いはくすねるといった腕白小僧で一家の出来そこないだった。ある日、主人の英介が京都へ出張する際、一家の主婦代わりをつとめるおヤエに留守中の生活費を渡した。それを知った英二郎は「英二郎さんが足を折って入院したので、五千円ばかり持って来て下さい」と、学友たちに悪企みの電話をかけさせた。見事罠にかかり、素飛んで駆けつけたおヤエを自動車に乗せた英二郎一味は、はしゃぐあまり車のハンドルを切り損ね、土手道を歩いている農夫の牛車へ突込んでしまった。家族会議の結果、信州のおじいさんの所へやられそうになった英二郎だったが、涙ながらに許しを乞うおヤエに、主人は英二郎の監視を命令した。徹底したおヤエの監視に身動きがとれない英二郎に、例の一味が「事故で怪我をさせた小父さんを見舞う」という一計を電話で授けた。しかしこの電話は、柴崎家のお徳婆やに盗み聞きされ、情報が百円でおヤエに売られていたのだ…。