地下駐車場の建設汚職事件にからんで行方不明になっていた元民政省交通局建設課員の岩田英吉がボストンバッグ片手に東京駅へ降り立った。岩田が沢村建設の社長沢村剛蔵に電話をかけている姿を見つけた春野刑事は部下の大山に岩田の尾行を命じた。沢村建設を訪れた岩田は吉本啓子がここの秘書になっているのを知って驚いた。啓子は、岩田の上司だった吉本課長の娘で、岩田の婚約者でもあったのだ。そして、一年近く身を潜めていた岩田が東京に姿を現わしたのは、この汚職事件の中心人物とみられていた啓子の父が酒に酔って大森海岸で死ぬという事件が起こったからだ。大森海岸は汚職に使われた場所で課長は酒を飲まないと知っていた岩田はこの事件に疑問を抱いたのだ。しかし、岩田に対する啓子の態度は冷たかった。取り付くしまのない岩田はナイトクラブ“赤い城”に入った。マダムのユキに溺死当日の様子を問いただす岩田の眼に映ったのは、沢村と共に入って来た啓子の姿だった…。