捜査陣に挑戦する凶悪犯の名は?謎が謎をよび、推理が推理をよぶ、怪奇と戦慄の本格スリラー巨篇!
千早は、北海道の開墾地で兄の良と働く明朗な近代娘であった。ある日、兄から渡されたハガキは、10年前から消息を絶っていた許婚・柳本憲からの便りだった。千早は兄の友人である新聞記者・乾を頼り、憲の手紙の発信地である千葉へ向った。連絡船で知人の島本に会った千早は、彼の助けを借りて憲を探したが、ハガキの発信地は意外にも刑務所だった。金網越しに見る憲はやつれ果て、昔の面影はなかった。殺人罪で刑期15年。彼はなぜか不可解な表情をチラリチラリと見せた。その夜、乾と助手の久美子たちと料亭で食卓を囲んだ千早は、憲が船員仲間と喧嘩して殺人を犯したこと、その事件に首をつっこみすぎた乾が新聞社をやめ、独自で通信社を始めたこと、憲が弁護人の控訴のすすめを聞かないことなどを聞いた。数日後、千早が千葉刑務所へ行くと、憲は脱獄していた―。