愛は空の果てへ
あいはそらのはてへ

瞼の母を求めつつ悪に転落せんとする青年と、彼を励ます娘を中心に母子の情愛を描く感動篇。

夜の新宿。孤児の圭次は聖母学園を脱走し、盛り場をうろついていた。パトロールの警官に気づき、慌てて飛び込んだ横丁の暗がりでぶつかったのは、夜の女・加代だった。加代も思わず身を隠し、無事に警官をやり過ごすと二人は顔を見合わせて苦笑した。去って行く圭次の姿に加代はふと過去を思い、胸が痛んだ。その頃、聖母学園の教官・杉浦は、警官と一緒に圭次を探していた。圭次は兄貴と慕っていた須藤のアバートにもぐり込んだのだが、若い女の着物、鏡台、フランス人形...部屋の様子がすっかり変わっていることに驚いた。やがて部屋に帰って来たのは、劇場の勤めを終えたた百合だった。知らぬ男の侵入に愕然とする彼女を見て、圭次は須藤が引越したことを知った。百合の可憐な姿態に野獣のような目を光らせた圭次だったが、抵抗する百合の「お母さん...」と叫ぶ声にハッとし、身をひいた。その時、警官の案内で杉浦がアパートを訪ねてきたが、なぜか百合は圭次を庇い、うまく追い返した。百合は瞼の母と十三年ぶりに再会出来たこと、それまでは保護施設にいたこと、圭次も自分の境遇を打ち明けた。自分は友達の家に泊まるから、と電話をかけに表に出た百合が大滝組の銀河の政に襲われた。顔色を変えた圭次の鉄拳で政は吹っとび、二人は苦笑を浮かべた。その夜、圭次は初めて知った人の温かい好意と百合への愛情を胸に膨らませ、まどろんだ。二人の愛情が急速に芽生える一方、再婚相手に遠慮していた百合の母親・光枝は、ようやく夫・戸河民之助の同意を得て、百合を引き取ることができる幸福感を味わっていた。しかし、百合に不良の男友達がいると聞いた民之助は、圭次の始末を思案していた。長野に借金を取りに行った圭次が帰京すると、百合は既に戸河家にひきとられ、圭次の訪問は虚しく百合に会うことができない。冷たい雨の降る夜、今日も門前払いされ、酔っぱらって歩く圭次に声をかけたのは、何時かの夜の女・加代だった…。

日本
製作:日活 配給:日活
1959
1959/2/17
モノクロ/6巻/1502m/54分/シネマスコープ・サイズ
日活
【東京都】新宿区(新宿駅東口、甲州街道陸橋、三越遠景)/港区(有栖川公園)