港で生れた男
みなとでうまれたおとこ

神戸一郎のヒット・ソングの映画化で、日活映画初出演作品。港町を背景に、綾なす父子の哀愁の物語を甘く美しいメロディのせて描く抒情篇。

サンマの大漁に活気づく港町。大洋漁業の臨時雇いとして働く高沢伸一は、市場から工場までサンマをトラックで運搬する運転手だ。伸一は同じ会社の事務員・中川敏子を愛している。今日も通勤途中の敏子を便乗させるため、相棒の水岡はサンマと相乗の浮目にあっていた。伸一はある日、バンクして停まっていた丸仙という竹輪問屋のオート三輪をひっかけてしまった。運転していた一郎は、敏子の弟だ。丸仙の女主人・勝代は敏子や一郎の伯母で、一人で店を切り盛りしている。伸一は勝代に、オート三輪の修理代三万円を要求され途方にくれた。臨時雇いの薄給では夢の様な大金だ。いきつけのバーのマダムに相談したが、サンマ漁で稼ぐことをすすめられるのが精一杯だった。勝代は、敏子を番頭・英吉の嫁にやり、丸仙を継がせるつもりでいる。敏子と一郎はそんな伯母に不満を抱いていたが、育ててくれた恩を感じないわけにはいかない。そんな事から一郎は、貨物船に乗ることを希望し、機関長の杉本に乗船を頼んでいた。一方、伸一は昼は運転、夜はサンマ漁と昼夜ぶっ通しで働き続け、ようやく三万円を返した夜、敏子と将来を語り合いながら楽しい一時を過ごした。番頭の英吉は、勝代から「敏子を取られるんじゃないよ」と言われたが、敏子が自分に気がないのを知っていた。数日後、勝代に呼ばれた伸一は「敏子を嫁に欲しいなら二十万円の結納金を揃えて来い」と言われ、愕然とした。「誰が育てた」という勝代の言葉には、敏子も一言もない。すると、その場にいた英吉が「私が二十万円出す」と伸一に挑戦してきた。これは、勝代と英吉が仕組んだ芝居だったのだ。涙顔の敏子を見た伸一は、二十万円揃えると思わす豪語してしまったが…。

日本
製作:日活 配給:日活
1958
1958/12/3
モノクロ/5巻/1298m/47分/シネマスコープ・サイズ
日活
【宮城県】気仙沼市(気仙沼港、気仙沼魚市場、サンマ漁風景)