貴金属店のシャッターが町の灯と共に静かにおりはじめた時、シャッターの外に形のいい女の脚が立った。店員が思わずハンドルを止めシャッターを女の背丈まで上げると、スマートな肢体を流行の服に包んだサングラスの女が声もなく店内に入り、シャッターは再びおり出した。眩い宝石類を整理していた中年の店員は不審気に目を上げたが、その女は自分の指にはめていた大きなダイヤの指輪を無造作に抜くと、「もう少し大きい粒とつけ変えたいんだけど」と柔和な笑みをたたえながら口を開いた。この時、閉まりかかるシャッターをくぐり抜けてマスクをした二人の男が拳銃を手に躍り込み、立ちすくんでいる店員たちに一撃をくらわし宝石を鷲掴みにすると、一味の一人が運転する車に駈け込み、車は猛然スタートを切った。これを追って、非常ベルを受けた交番の巡査の拳銃が一発、しかし、車は湘南の国道を一直線に西へ……一方、結婚式を間近に控え、東京への栄転も決まった三崎光次は下宿先の扇医院で、院長の扇良一と看護婦の秀子の三人でささやかな送別会を行っていた。そこへ電話のベルが不吉に鳴り響いた…。