影なき声
かげなきこえ

殺人犯の声を偶然聴いてしまった電話交換手が同じ声の男に出会う。松本清張の短編小説「声」を鈴木清順監督が映画化。割れた鏡の見せ方など清順らしい映像美が満載。

毎朝新聞社の敏腕事件記者としてサツ廻りをしている石川汎は、取材からの帰途、世帯やつれした一人の婦人を見かけて首をかしげた。その婦人は、毎朝新聞社の元交換手・高橋朝子だった。3年前、朝子は電話のかけ違いから殺人犯人の声を聞いてしまい、いまだに不気味な声に悩まされていた。彼女の夫で、大東京広告社という宣伝社で働く小心者の小谷茂雄は、社長の浜崎と競輪場で一獲千金を夢見ていた。初めて得意先が見つかったある日、茂雄は家に取引先を招待し、麻雀の接待をするよう浜崎に命じられた。メンバーは、薬局を営む川井、ビリヤード屋の村岡、それに浜崎と茂雄だ。浜崎が来るのが遅いため、茂雄に電話をかけるよう言われた朝子は、浜崎の声を聞くと血の気が失せるほどの恐怖を感した。というのも、昼夜忘れず悩んでいた例の不気味な声に酷似した声がしたからだ。牌をかき混ぜる騒々しい音を聞きながら、朝子は青ざめていた。“質屋殺人事件 殺人現場から犯人の声、深夜、偶然に聞いた電話交換手”という3年前の新聞記事の黒字文が、不気味に甦った。一人悩む朝子は、警察に言うべきかどうか、連日夢遊病者の様に街を歩くようになった…。

日本
製作:日活 配給:日活
1958
1958/10/22
モノクロ/92分/シネマスコープ・サイズ/10巻/2516m
日活
【東京都】新宿区/千代田区(毎日新聞電話交換室)/練馬区(石神井、石神井の秋祭りのおみこし、石神井の畦道)