年に一度の秋祭に賑わう岬村の、平和な空気を打ち破るかのように丸木屋燃料店主自殺の報を知ったのは、結城三郎巡査が、長年この村の小学校長をつとめる恩師矢野啓介の愛娘で、許嫁でもある美沙子と楽しく未来を語り合いながら、のどかな村道を散歩している時であった。滅多に事件のないこの村にとっては、これは大変な出来事だった。三郎もおっとり刀で現場へかけつけた。ただ事業不振のために自殺したとだけ死因を説明する丸木屋の一人娘由美に不審を抱いた三郎は、さらにその死因を究明することを怠らなかった。丸木屋の土地の権利書が何者かに奪われたという噂を聞いていたからだった…。