愛娘を誘拐された両親の苦悩、その犯人を追う刑事の焦燥、逃げまどう犯人の困憊を鋭く描いたドラマ。
白百合幼稚園から見知らぬ男の車に乗せられた島田家の愛娘・美佐子は、何かしら幼な心にも不吉な予感に襲われた。その夜美佐子は母・古代とバレエを見に行くことになっていたが、その迎えの車と思って乗った車が、何時ものと違うし、運転している眼鏡の男も見覚えのない顔だと気付いた頃には、美佐子の意識は睡眠薬のために朦朧としていた。待てど暮らせど帰らない愛娘を案じて、島田家は恐怖と不安のどん底に落とし込まれた。高橋刑事らは、これを少女誘拐事件とみて直ちに捜査本部を置き、幼稚園の加納先生たちを呼んで、犯人の人相などの聞き取りを始めた。続いて、会社の金を使い込んで一年前に辞めさせられた小谷春夫という運転手のことを島田から聞き、早速小谷の取り調べを始めたが、小谷は知らぬ存ぜぬの一点張りで釈放せざるを得なかった。この事件を巡って新聞社の動きも激しくなったが、新聞記者が騒ぐほど、犯人の思うつぼにはまるばかりだと、高橋や島田の心はイラ立ってきた。その頃、犯人――深井慎二と名乗る男は、ボロアパートの一室でニヤニヤ笑いながら島田夫妻への脅迫状を書いていた…。