霧の中の男
きりのなかのおとこ

怒りも憎しみもなく人を殺すという救いなき男の怪奇な運命を描いた石原慎太郎原作の映画化で、葉山良二初のギャング役。

霧の深いある真夜中のスタンド、死に頻した水原は、 自分の怪奇な運命を思い起こすのであった......。
無惨な敗戦、水原は戦友の三村と一緒に、捕虜収容所にいれられた。いつ帰れるかも解らない異国での生活に堪えきれなくなった三村は、逃亡を企て成功した。水原は逃亡の手助けをしたと見なされ、坑道におしこめられ、石炭を堀らされた。気がおかしくなるか死かという苦難の時を過ごした6年で、水原は人間としての感情を失くした。何事にも無感動になった水原は、懐かしの帰国を果たすも賭博場荒らしという荒んだ生活を送っていた。ある賭博場で、水原は戦友の三村に再会した。山形という得体の知れない男の下で働いていた三村の紹介で、水原も山形の下で働くようになった。水原はそこで、エマという女を知った。エマは三村の情婦であり、山形の秘書でもあった。三村は、エマとの結婚のため足を洗いたいと山形に打ち明けると、最後の仕事として人を殺めることを条件に受け入れられた。三村は不吉な予感を抱いたが、それは的中していた。山形は水原に、三村を消せと命じていたのだ。水原は友の三村を冷酷に射殺した。その頃から水原の生活は、さらに荒れていった。エマを抱いても何ら人間的感情は湧いてこない。憎しみも愛もなく、ただ山形の命令だけで人を殺めていった。相捧は、痩せこけた中村という男に変わった。そして今度の殺人の標的は、ある中年夫婦だった。無造作に惨殺し終えた水原と中村は、待たせておいたセダンに乗り込んだのだが、車にエマがいたこと、中村の行動の不審さから、水原は自分も三村の立場におかれている事を悟った…。

日本
製作:日活 配給:日活
1958
1958-04-08
モノクロ/93分/シネマスコープ・サイズ/巻/2534m
日活