伊丹紀子は、久志本紀子というネームで服飾界に知られる一流デザイナーであった。紀子は画家である均という夫とその均の先妻の子である眉子という娘があった。紀子の日常は多忙をきわめ妻の仕事もおろそかになりがちであったが彼女は稀にみる才女で、万事破綻なく日々を夫の均と共に過ごしていた。ある日、紀子は留守中に均が旅行に出かけた事を聞き、カレンダーを見ると慌ててその後を追った。その日は三回目の結婚記念日で、温泉へ行くのが慣わしであったからである。紀子が温泉へ着いた時、均は野天風呂で裸体姿の美しい一人の女性を見つめていた。その頃、東京の伊丹家では娘の眉子がアルバイトを見つけた記念に友人を集めて賑やかにパーティを開いていた。眉子はお茶目で明るい性格の持ち主であったが、母である紀子があまりにも完璧な女性であるために、ことごとく反感を抱いていた。数日後、伊丹家において生駒久子という女性の訪問を受けてにがりきった均の顔が見られた…。