あまから横丁の住人で揃いも揃って間抜けなお人好し、パン屋の六さん、保険外交員の良夫さん、酒屋の金ちゃんの三人に、ある日、税務署の次に苦手な警察署から呼び出しがかかった。恐る恐る出頭した三人に係官が手渡したとんでもない遺失物、それは六歳くらいの薄汚い男の子・紋太だった。一緒にあった手紙によると、紋太は実は大財閥の御曹司なのだが、故あって一ヶ月ほど人情篤志家といわれる三人組に預かってほしいとのこと。「とんでもない」と辞退したものの、御礼はたっぷりと聞いて三人は飛びつくように紋太を連れて帰った。ところが、この紋太坊ちゃまはすこぶるつきの腕白小僧。良夫さんが美容室のマダムに保険契約を取りに行った日には、お客にイタズラをして大騒ぎになり、せっかくの契約がふいになってしまった。次に六さんが預かると、紋太は六さんの息子と公園に繰り出したはいいが、しばらくすると、六さんのパン屋に次々と紋太に子供がやられたといって親たちが押しかけ、そのたびに売り物のパンで勘弁してもらったため、パン屋は商売あがったりになってしまった。そして金ちゃんが預かると、紋太は倉庫の酒を飲んでべろんべろんに酔ってしまい、大財閥の御曹司とは真赤なウソで父はすでに死んでおり、紋太の姉が生き別れになった母を探しに九州へ行っていると言うのだった。