死の壁の脱出
しのかべのだっしゅつ

異色の作家・石原慎太郎が「霧の中の男」のヒットに次いで再び好漢・葉山良二のために書き下ろした、スリルに富むアクション篇。

劉芳樹という名で香港の暗黒街に君臨した木川は、麻薬街の黒幕・吾妻と共に密航船で日本に向っている―。 ネオンきらめく東京の歓楽街にあるクラブ「カーマイン」の密室で、木川は素晴らしい肢体の三浦恵子と会った。彼女が連れてきたブローカーと吾妻との麻薬取引に立ち会った木川は、香港の麻薬ルート元締・貴山公司からの電報を手渡された。横浜港へ入るサルターニャ号から2個のトランクを受け取り、受取人に引き渡す仕事だ。受け取りに成功した木川は、所定の場所でトランク受取人を待った。午前2時、約束の時刻がきた。向き合った車の中で、互いに緊張の数刻。木川に命令された山田と相手の車から出てきた黒い男が近つくと、瞬間、黒い男が地面に伏し、銃声と共に山田は倒れた。トランク1個を奪った車は、木川に銃を浴びせながら猛スピードで逃げ去った。事態は明らかだ。トランクの中味を知る一味が、受取人の裏をかいて奪っていったのだ。翌日、「カーマイン」の密室に正当なトランクの受取人がやってきた。現れた男女は、木川を見て驚愕した。 二人は、南方の或る国の人民独立の指導者ハッサと夫人のサヤンで、木川が日本軍将校として南方従軍中に固い愛情に結ばれたサキンの妹が、サヤンだ。過去の思いに顔をこわばらせた木川だが、再び冷酷な表情に戻り、一割の報酬を代償に、2億円の金塊が入っているという奪われたトランクを取り返す約束をした。身の危険を避けるため、木川は二人を箱根にある恵子の別荘に案内した。深夜、「カーマイン」へ戻った木川は襲われた吾妻を間一髪救ったが、これでトランクを奪った一味のボスが、スペンダーという大物外国人であることも判明した。 木川は吾妻に人手を集めさせ、スベンター襲撃を計画した。とその時、ベルが不吉に鳴りひびいた。サヤンを人質にもう1つのトランクを引き換えようというスペンダーからの電話だった…。

日本
製作:日活 配給:日活
1958
1958/5/27
モノクロ/11巻/2683m/98分/シネマスコープ・サイズ
日活
【東京都】中央区(銀座夜景、日本映画資材㈱東京支社前の通り)/港区(神宮球場外回廊、第一ホテル)/大田区(羽田空港、日本航空・穂高号)/千代田区(日活国際会館地下ガレージ) 
【神奈川県】横浜市(横浜港)/川崎市(川崎埠頭)/箱根町(箱根ドライブウェイ、仙石原、芦ノ湖畔、芦ノ湖、大川橋)/真鶴町