その日、大島空港に降り立った東京遊覧航空のパイロット藤村武夫は、出迎えのアンコたちの中に親友の今田一郎の妹綾子の姿を見出して精悍な顔を輝かせた。だが、綾子は藤村のセスナ機でやってきた田沼という得体の知れぬ男を小柳旅館に案内するからと藤村の誘いを断り彼をがっかりさせた。綾子と小柳旅館の息子英次とは親の定めた許婚者だった。藤村は綾子を愛していたが、それを知って以来あきらめ、今は妹のように彼女を思っていた。綾子の兄一郎はそんな藤村の気持ちを知っていたが、妹は親の定めた通り小柳家へ嫁ぐのが幸福だと考えていた。しかし、たまたまその日一郎はふとアンコたちが話していた英次の噂を聞いて心を痛めた。英次が島の資産家の娘で東京の学校へ行っている泉春江と恋し合っているというのだ…。