場末の繁華街にある安っぽい劇場、その楽屋口を訪れた刑務所帰りの武村は、流れるトランペットのメロディに、儚く死んだ踊り子の面影を思い浮かべ胸を詰まらせた。8年前、武村はこの劇場のトランペット吹きだった。この武村を慕っていたひろみは幼い妹を抱えた踊り子だった。しかし賭博に憑かれた武村にとっては金をせびるだけの女でしかなかった。一方、武村の出入りする賭場にたむろしていたヤクザの河童の安は、かねがねひろみの体欲しさにその機会を狙っていた。その日、武村は負け続けた。安は武村に金を用立てると言葉巧みに武村からでっち上げの借用証をとり、連れ込み宿の一室でひろみの純潔を奪ってしまった。駆け付けた武村と安が格闘の末、安は鮮血にまみれて倒れ、その場を飛び出したひろみも絶望のあまり自殺をしてしまった。感慨にふける武村の過去を知っているものは今では楽屋番の源爺さんと踊り子の圭子だけだった。当時、まだおさげ髪で何も知らなかったひろみの妹の薫はいまや踊り子のスターとして人気を呼び、中井という若い歌手の恋人もいた。圭子のはからいで武村は再び舞台を踏むことになった…。