裏日本の小さな漁港。どんよりした灰色の空、暗いうねりの海。粉雪の中をトロール船が一艘ひっそりと岸壁に着くと、背の高い外国人風の男が一人、人目を避けて降りて来た。数千万円に当る大量の麻薬を身に着けて密入国したこの男、ロード・ライアンは日本人を母に米人を父に持った混血児で、麻薬の運送代五万ドルを元手に母親を探そうと、日本にやって来たのだった。彼は新潟のキャバレーで踊るポルトガル女ニーナの手引きで東京にいるボス、ポールの処へ潜入した。ところが案に相違して金の代わりに突き出されたのはポールの拳銃の筒先だった。彼は初めて計られたことを知った。一瞬怒りに燃えたロードの拳銃が火を吹くとポールの拳銃ははね飛ばされていた。その腕の確かさにポールの一味が気圧されてひるんだ隙にロードは身軽に外へ飛び出していった。東京駅の私設荷物預り所のロッカーに麻薬入りのバッグを預けたロードは、朝鮮戦争時代の馴染みのバーで条太郎に逢った。目の色も国籍も違う二人だったが、なぜか、兄弟のように親しい気持ちが二人を結び付けた…。