春泥尼
しゅんでいに

誰もがうかがい知ることの出来なかった尼寺という禁断の園の実態を衝き、若く美しい尼僧の私生活と愛欲を描く異色篇。

春枝は、貧農の娘として生まれた。斗鶏に狂う父、一日の糧にあくせくする母にとって「春技を尼にすれば楽に暮らせる」という天徳寺住職の話は耳寄りだった。自分の家に下宿する若い教師・泉田に唇を許していた春技は尼になることを嫌ったが、幼い弟妹達を救うため悲しい決心をした。河内生駒山に静かに眠る門跡寺院で、春枝は得度式と称する断髪の日まで、尼僧見習いとして色々な修業をさせられた。御附弟さんである春鏡は春技と同じ年で、春枝をいじめる光映尼から彼女を救ってくれた。そんな訳で、春枝は春鏡に心から尽くした。やがて梅の枝に鶯の鳴く頃、春枝の断髪式が行われた。御仏の前で女の生命である黒髪が剃り落とされ、可愛らしき尼僧「春泥」が生まれた。黒髪をみつめながら、春泥の頬にはとめどなく涙が溢れ落ちた。その春、春泥は春鏡と一緒に京都にある尼衆学林に入学した。寺を離れた解放感に浸る二人に、同僚の妙宜の引き起こした恋愛事件は大きな衝撃を与えた。煩悩を断ち切る尼にありながら、女としての喜びに恋人の後を追って死の世界へ旅立った妙宜。それはあまりにも生々しい尼僧の末路を示したものだった…。

日本
製作:日活 配給:日活
1958
1958/2/26
モノクロ/98分/シネマスコープ・サイズ/11巻/2684m
日活
【京都府】京都市(八坂神社、清水坂、花見小路、走る軽便電車、門跡寺院、炎上する五重塔、尼衆学林・門、堤の道、林間の道)
【滋賀県】大津市(比叡山・根本中堂)