美しき古都・祇園を舞台に、舞妓の妹と大学生の姉が一人の男をめぐって繰り広げる純愛の物語を詩情豊かに描く青春叙情篇。

祇園に生まれ祇園で育った芸者、戸久には二人の子供がいる。姉の文子はこの土地を嫌い、大学に学ぶ近代女性へと成長した。一方、妹の戸美葉は母と同じ道を歩み、売れっ子の舞妓になった。道は違えど姉妹は仲が良く、文子は厳しい舞妓の世界に身を置く妹を明るく励まし、戸美葉は稼いだ金を苦学する姉へ渡すなどして、お互い支え合っていた。そんなある日、戸美葉は死んだ父のかつての友人から五郎を紹介される。五郎は東京から来ていて、京大に学ぶ学生だった。戸美葉は五郎を連れて京都、奈良を一日かけて案内し、別れ際には素直で真面目な五郎に対し、今まで異性に感じたことのない小さなときめきを胸に感じ始めていた。それから数日、卒業を間近に控えた文子は友人である五郎と会った。文子もまた、長い間五郎に想いを寄せていたのだ。