肉体の悪夢
にくたいのあくむ

暗黒街の麻薬ギャング団の罠に落ちた美貌の若き女医とその恋人、これを救う保安官をめぐるスリルと官能の活劇巨篇。

麻薬注射による巧妙な他殺事件が起こってから間もなく、精悍な体つきの大島鱗太郎は、莫大な保釈金によって出所した。“九竜貿易公司”という会社に連れて行かれた大島は、水戸と名乗る社長に会った。水戸は表向きは貿易商だが、実は暗黒街に巣喰うギャングのボスだった。大島とは刑務所仲間で、彼の度胸と腕っ節の強さに惚れ込み、自分の片腕にするため刑務所から呼び戻したのだ。水戸は、情婦に経営させているキャバレー“ボスコウ"に大島を案内した。ここは商売上の取引場所でもある。 そこへ、情報を水戸に提供している松本が慌てて飛び込んで来た。商売敵の東亜組が、水戸達に殴り込みをかけるというのだ。その頃、土建屋の若社長・黒田清隆は、持病の胃痙攣のため山楽病院に向かった。診療に現われた上田医師は、インターンの石川芙美を呼ぶと、彼女に診療を任せた。胃痙攣が治まった黒田は、甲斐甲斐しく手当をしてくれた芙美を、御礼代わりに料亭に誘い、 愉しく談笑した。芙美の家には、親娘二代の妾を何とも思わぬ母や長女、男と遊び廻る次女がいた。そんな境遇から逃れるように、芙美は黒田との逢瀬を待ち侘びるようになった。一方、大島は“ボスコウ”に通ううち、水戸の影の商売を知るようになった。ある日、“ボスコウ”に東亜組の連中が嫌がらせにやって来た。大島が凄まじい鉄拳を彼等に叩きつけ、この騒ぎに、芙美を連れて遊びに来ていた黒田が大島を援護したが、また持病の胃痙攣を起こしてしまった。黒田は親身に介抱する芙美に激しい愛情を憶え、芙美も黒田を愛していることを知った。芙美は、やがて黒田と同棲を始めた。しかし、二人の幸せな生活にも黒田の持病が大きな不安となった芙美の脳裏に閃いたのは、麻薬という思いつめたものであった。 やがて黒田は、知らず知らずのうちに中毒患者になっていた。芙美の心は愛憎の谷間をさまよい、苦しんだ。愛する黒田のため麻薬の入手に奔走する芙美がやっとさぐり当てた場所は、“ボスコウ"であった。単身危険な所に出入りする芙美に大島は驚き、忠告した。しかし、このことを松本から聞いた水戸は、薬を餌に山楽病院に麻薬の販路拡張のワタリをつけろと芙美を強迫し…。

日本
製作:日活 配給:日活
1957
1957/11/17
コニカラー/95分/シネマスコープ・サイズ/10巻/2600m
日活
【東京都】台東区(隅田川夕景、支流、モーターボート、掘割の岸、ボート小屋のある川岸、柳橋界隈の夜景)/葛飾区(東京拘置所の表)
【群馬県】嬬恋村(万座温泉)/草津町