一日の働きに疲れた人々が、ささやかな娯楽を求めて集まる盛り場……、その陰には常に暴力と犯罪の温床があり、やくざと愚連隊が巣食っている。この悲劇もまた、盛り場ならどこでもいつでもありそうなことであり、大して珍しいことではないだろう。マシンの竜と綽名されている源三が、江戸川の大親分の秘命を受け、河北組の賭場へ乗り込んで来た。江戸川が河北組からここ半年ばかり売上金が届かないのを不審に思ってのことだった。周りを取り巻いた河北組の連中を尻目に河北を追求する源三の姿を、チンピラの健一は憧れの眼差しで見守っていた。健一には両親があるが、生き別れになっている。ヤクザの父は十五年前、健一と母を捨てて家を出たきり行方が判らず、母もドライブクラブの主人・内藤と再婚してしまっていた。健一にも千恵子というキャバレーの切符売りの恋人がいる。チンピラには勿体ないほどの純情な娘である。ところで、江戸川は新築の劇場の縄張り争いで河北組と山甚との間にひと騒動起きそうなこの土地によそ者の源三を送り、その中に巻き込ませて源三をバラそうと企んでいた。そのことを知るや知らずや、源三はこの町に乗り込んで来たのだが、それには訳があった…。