マダム
まだむ
織田作之助の未亡人・織田昭子原作のベストセラー同名小説を映画化。夫婦の宿命的な愛情を背景に辿る「悲運な女」の哀歓を描く。
矢田秋子は銀座でも一流のバア“ナシサス”のマダム。女給も粒よりの美女たちが揃っている。しかし、世の中を割り切って暮らす夜の銀座の女王マダム秋子にも、秘められた哀しい女の過去がある。秋子にはかつて流行作家・矢田作之介という命がけで惚れこんだ夫がいた。矢田は妻がありながら様々な女と恋愛し、後始末は秋子の役目だった。その矢田も病魔に倒れ「すまんな…」と謝ると、秋子にみとられて死んでいった。正式に妻の座に入っていない秋子に、親類たちは矢田の死後冷たかった。女流作家・林ふさ子が非情な人間たちに抗弁して庇ってくれたが、所詮矢田の妻になり得なかった。やがて、矢田の生前から彼女に密かな思慕を抱いていた豪商の一人息子・杉浦浩一と東京に駆け落ちするものの、たちまち生活は破たんし、別れるのだった。秋子は林ふさ子に云われた「他人に甘えるな」という言葉通り、今は一人で強く生き抜く決意を抱いた。それから間もなく秋子は中原という会社の重役に資金を借り、東京で本格的にマダムの座についた。バア“ナシサス”の常連は中原をはじめとして多種多様な客だったが、この酒の香と紫煙のうずまく世界には、毎夜色と慾の様々な花が咲いていた。秋子は女給達に何時も、浮気は決して女の幸福を築くものでないことを教えるのだった。その秋子には、融資した金三百万円の返済をたてに、中原の魔手が次第に迫りつつあった…。
日本 製作:日活
日活
1957
1957/4/24
モノクロ/94分/スタンダード・サイズ/10巻/2571m
日活
【京都府】京都市(鴨川べりの酒場“火の鳥”)
【大阪府】大阪市(大黒橋)