聳える蔵王連峰、陽を浴びて眩しく光る白い大きな斜面—この大自然のふところに小さな町がある。茂木保吉は、戦争で父母を失い姉ミツ子と二人でこの町の古道具屋を営む伯父夫婦の家に引き取られた。今ではミツ子は嫁ぎ、保吉は高校卒業を間近に控えていた。伯父の庄蔵は保吉に店を継がせようとしていたが、保吉には東京の大学に進学する夢があった。同級生の坂田テルはこんな保吉に淡い恋心を抱く明るい娘で今日も保吉が落とした制服のボタンを優しくつけてあげるのだった。家に帰った保吉に大学の受験票が届いていたが庄蔵に見つかってしまった。そのうえ、ミツ子が嫁ぎ先の古河家にいたたまれず帰って来たことで庄蔵の怒りは増すのだった。ミツ子は姑との対立と世間の目を気にする夫の弱さにいたたまれなかったのであった。姉の話を聞くにつけ、大学への進学を許されぬ保吉とミツ子の姉弟は東京で苦しくとも生き抜くことを誓うのだったが…。