美貌の未亡人妙子は、昨年夏の終わり、夫藤崎三郎と死に別れてからは、、娘良子の成長と過ぎし結婚生活の想い出を胸に、感傷と憂愁の日々を送って来た。妙子の父藤崎老人は、一周忌を迎え、家へ近親の者達を招待し、故人をしのぶというよりも、妙子の再婚を願い明るいパーティーを開くのであった。来訪者の中で特に妙子の将来を心配しているのは、美学を専攻し博士号を目ざす青年秋山豊であった。秋山にとって亡き藤崎三郎は山岳会の先輩であったが、以前から妙子をひそかに慕っていた。だが皮肉にもまたこの秋山を慕う女性がいた。それは貿易会社に勤める近代女性、立松正子だが、その愛を打ち明けられなかった。秋山が妙子を愛している事を知っていたからである。パーティーは静かなブルースの曲に乗って進んでいった。秋山、そして妙子、正子の三人はそれぞれの想いにふけっていた。