人通りの多い繁華街、その華やかなショウウインドウを覗いていた一人の男が、急にガクンとうなだれると滑るように倒れ、ワイシャツにはみるみるうちに鮮血が拡がっていった。その後も、人の集まる高層ビルのエレベーターの中、白昼の走り去る高級車の中と、人目もはばからず次々と起こる謎の殺人事件を捜査中の警視庁では、その手口から密貿易により輸入された「無音拳銃」による凶悪犯罪であるとにらみ、全国的に捜査網を張った。しかしその捜査を担当した刑事まで同じ無音拳銃により殺され、捜査は全く行き詰まってしまった、ちょうどその頃、一艘の相当にくたびれた船“かもめ丸”が港へ急いでいた。舵を握っているのは船長の山田仙吉で、海に育ち海に死ぬ気でいる彼には、船のことはそっちのけで無電機ばかりいじりまわし、何かというと陸へ上がりたがる三郎が気に喰わず、年中喧嘩が絶えなかったが、本当は実の親子以上に仲が良く傍目にも羨ましいぐらいであった。港について一息つく暇もなく、矢継ぎ早に次の仕事が待っていた。荷主は電気器具の問屋で旭商事だった…。
※左京路子は1952年新東宝第1回スターレットで映画界入りしたが、1954年製作再開後の日活に移籍。本作で小杉勇監督により主役に抜擢されると同時に、芸名を「郷絢子」から幼少期を過ごした京都市左京区にちなんで小杉監督が「左京路子」と命名。