かつてフィリピンのベンゲット道路建設に従事した人力車夫の生きざまを、明治、大正、昭和へと変遷する時の流れの中に描く。織田作之助の名篇を、川島雄三監督が辰巳柳太郎を主演に迎えて映画化。美術・中村公彦による大阪天王寺・河童路地のオープンセットも見事。
明治の末、フィリピンのベンゲット道路開拓の工事現場で働いていた血気盛んな一本気の若者・佐度島他吉(辰巳柳太郎)は、完成した道路の利用手段に憤慨して大暴れしたため、本国送還の身に。やむなく生まれ故郷大阪天王寺の長屋に帰って来たが、彼にとってフィリピンはもはや第二の故郷であり、「ベンゲットのたあやんの凱旋や」と見栄をきった。5年前、フイリッピンに出発する前夜に情を交したお鶴(南田洋子)が初枝を生み、女手一つで育てていたことを知った他吉は、自分の身勝手を詫び、俥の梶棒を握って精を出した。ところがお鶴は長年の苦労からか病に倒れ、死んでしまった。歳月は流れ、美しい娘になった初枝は新太郎と恋仲になった。はじめは許さなかった他吉も、やがて結婚を許した。ところが不幸にも、初枝と新太郎の新居は新婚早々に隣家からの出火で灰となってしまう。意気消沈する新太郎に他吉は「フィリピンへひと旗挙げに行け」と送り出した。子供が出来ていることを知らせずに新太郎を神戸港に見送った初枝のもとに、間もなくフイリッピンから新太郎の客死の報せが届き…。