夜明けの空に那須の山々が聳え、麦の穂波がそよぐ山麓の部落に、朝の光が浮かんで来た…。今日は麦刈り。隣の秋葉の人達が手伝いに来ることになっているこの部落の旧家小手家の次男省作は、まだ高校生。慣れない麦刈りに痛む体をもてあまし、若い女中おはまにヒヤかされた。負けん気の強い省作は、おはまに麦刈りの競争を挑み、負けたらハーモニカをやる約束をする。麦刈りの手伝いに姿を見せたのは、清六の母おたきと嫁のおとよの二人で、主人の清六は腹痛を訴え、仕事を休み、悪友たちと競輪に出かけてしまった。旗色の悪い省作が、あわてて指に鎌をひっかけたのを見て、おとよは、惜し気もなく被っていた手拭いを裂いて、彼の指を縛り、そっと自分の刈った麦束を省作の中に入れてやるのだった。その夜、おとよは、秋葉の家へ風呂を貰いに来た省作の手を握った。生れて初めて異性の肌に触れた省作は、蒲団の中に入っても、おとよのことが頭にこびりついて、眠れずに寝返りを打つばかりであった…。