東京洲崎遊郭の飲み屋を中心に、歓楽街に出入りする、明日知らぬ人生を生きる儚い男女の生態を描いた風俗映画の異色篇。
初夏の浅草、義治と蔦枝はただあてもなく歩いていた。親に結婚を反対されて家出し上京したが、職もなく財布の金も尽きかけて途方に暮れていた。蔦枝は「赤のついている方へ行ってみたいの」と交差点を思いつきで幾度も渡り、そして二人が辿り着いたのは洲崎にある遊郭街「洲崎パラダイス」だった。近くにあった飲み屋に入ると、蔦枝はそこの女将であるお徳に二人の職を頼んだ。お徳は面食らったが、常連客に慣れた様子で楽し気にお酌する蔦枝の振る舞いを見て、しばらく家に置いてやろうと決めた。蔦枝はその飲み屋の女中として、義治はお徳が紹介してくれた蕎麦屋の出前として、二人はやっと地に足をつけて生活していくことができたが、ある日、蔦枝が常連客と出掛けたまま帰ってこなくなり、義治は慌てて探し始める…。