孤児として育った薄幸なヒロインが様々な困難に遭遇しながら、いくつもの偶然に導かれていく。当時大流行した連載小説の映画化で、恋愛ものと母ものをミックスした西河克己監督によるメロドラマ。初々しく健気な芦川いづみが素晴らしい。
両親がいないという理由で就職も出来なかった橋爪淳子は、業界の立役者・矢沢慎太郎の力添えで芝田建設に入社することが出来た。淳子は伯父・省吉の家で世話になっていたが、伯父は執拗に彼女に迫り、淳子は彼の毒牙から危うく逃れることがしばしばだった。矢沢の計いで淳子は芝田専務の秘書見習となったが、このことは秘書の亀井紀代子の羨望をかった。或る日、淳子は帰りの電車の中で青年と荷物を取り違えたのだが、その青年・松尾吾郎と計らずも社の廊下で出会い、同じ会社の社員であることを知った。無愛想な松尾は、見かけによらぬ好人物で、その場に居合わせた同僚のモダン青年・志村徹と三人で食事をすることを申し出た。次の日曜日、松尾と志村と淳子の三人は、相模湖にドライブへ行った。明朗青年の松尾は、淳子の日々の暗い気持を明るくした。数日後、相模湖の写真が出来たと志村から連絡をもらった淳子は、松尾も来るというのでアパートに出かけたが、それは志村の企みだった。志村に抱きすくめられる寸前、危うく松尾に救われた淳子は、アパートを飛び出したときに偶然通りかかった矢沢の車に呼びとめられた。事情を知った矢沢に優しく慰められ、淳子の気持も和らいだ。その夜、伯父の家に帰った淳子は、叔父が伯母・かねのもとから逃げ出す争いに遭遇した。よろめきながら叔父を追った叔母は、自動車に轢かれた。かねの死に際、淳子は死んだと思っていた母親・ふみ代が生きていることを知った…。