名寄岩 涙の敢斗賞
なよろいわなみだのかんとうしょう

相撲の世界で、ただひたすら土俵への情熱と誠実さをもって生き抜いた名寄岩の、汗と涙の輝かしき半生記を描いた野心作。

群雄割拠する厳しい相撲の世界に入門した名寄岩は、ただひたすら土俵に情熱と誠実さをもって挑み、小結、関脇、大関と昇進した。しかし最近では妻、初枝の病気や経済的貧困が重なって転落の一歩を続け、極度に負け越してしまった。土俵に上がる名寄岩に浴びせられたファンの声は、激励の歓声に混じって罵声が聞こえるほどだった。一方、名寄岩の自宅では、結核で長い間床についている初枝や一人息子の竜夫らが心配そうにラジオに耳を傾けていた。今日もまた、名寄岩は負けてしまったが、家路を急ぐ彼は敗北を引きずることなく、恩師にもらったカステラを早く初枝と竜夫に食べさせてあげたい、その一心だった。辛くても苦しくても相撲は彼にとって生命であり、生活の糧を得る唯一の場所だった。しかし、自身の身体は病魔にむしばまれているのだった。

日本
製作:日活 配給:日活
1956
1956/6/7
モノクロ/90分/スタンダード・サイズ/10巻/2458m
日活
【東京都】杉並区(浴風園=名寄岩が入院中に稽古に励む場面)/台東区(蔵前国技館=備州山との取組の場面、断髪式の場面)
※両国河岸の料亭で名寄岩が小暮博士と真砂子がチャンコ鍋を囲む場面はセット。
※舞台(新国劇。池波正太郎作・演出、島田正吾主演で明治座で上演)の好評を受けて日活が映画化に踏み切った。
※当初は小杉勇が名寄岩を演じることになっていたが、交渉を重ね名寄岩本人の主演が叶ったという。
※NHKの志村正順アナウンサーも特別出演した。
※併映作品:『乙女心の十三夜』