江戸波乱の末期に、幕府に対決を挑む武田菱の旗印の一団が金鉱の秘密をめぐって跳梁する本格的怪奇犯罪の黄金地獄を第一部に、背中の皮を剥ぎ取られた死体が人肌の恐怖をまねく第二部人肌地獄、解決篇の決斗地獄と続く本格的怪奇犯罪のスリラー時代劇連続篇。
文化12年、財政の再建と権勢の回復を急ぐ江戸幕府は、乱掘に荒廃した佐渡、伊豆の金山に代わる新しい金鉱を開発するため、旗本・田村吉兵衛と倅吉六の指揮する測量隊を武州・甲州・信州の国境にある甲武信嶽に向かわせたが、銀髪の妖婆・阿具利の指揮する武田菱の旗差物を持った野武士の一団の襲撃に遭い失敗する。その頃、江戸では刺青を求めて否応なしに人肌を覗く、武田菱の紋所をつけた覆面の男が出没していた。ある夜、芸者のおこんを相手に大川の舟遊びに興じていた田村は、自邸の火事の報に接し駆け戻ると旧友の久助が武田菱のために背中をはぎ取られて死んでいた。田村は倅の嫁にと望んでいた久助の娘・美乃を火事の時助けてくれた「や組」の文七とその倅・伊太郎を屋敷へ呼んだが、文七が探していたもう一人の旧友・文七であると知り驚く。その文七もある日、武田菱の男に背中の刺青を狙われ、伊太郎に刺青の真実を言い残して死ぬのだった。